すれちがう│潜水工房　鯨庵　kujira-an

「今、すれ違いましたね」

とお客さまからラインがきた。

車の運転中だった。

うわ。
なんなんやろ、この何とも言えない気持ちは。

運転しながら、何してたか思い出されへん。

音楽に合わせて大熱唱している時もあるし。
なんなら、手拍子している時もあるし。
鼻毛抜いてる時もあるし。
ヘアオイルつけてる時もあるし。
BGMが、さだまさしの時もあるし。
思い出し笑いしてる時もあるし。
思い出し泣きしている時もあるし。
ラジオに真剣につっ込んでる時もあるし。

何かは、見られているはずや。

とにかく車の運転中というのは、見られてるなんて全く意識していない時。

そんな時にすれ違いたくないな。

ボクも相手に気がついて、軽く会釈。
これならまだええけど。

一方的に見られているというのは、どうもな〜。

となりに石原さとみがいたり。
乗ってる車がポルシェだったり。
BGMが、ボサノヴァだったり。
ムダにペリエなんて飲んでたり。
ワイルドにホットドッグ食べていたり。
後部座席にマシンガンをつんでいたり。
なんならバズーカーをつんでいたり。
高級スーツに身を包んでいたり。

そんなんなら見られてもいいかな。

「今、すれ違いましたね」

のラインを見た時、
どちらかというとよくないものを見られてるというふうに思った。

たぶんそうなんやろう。
とてもかっこ悪いところを見られていたんやろう。

ま、それでもいいじゃないか。
っていうか、しょうがないじゃないか。
それがホンマモンの自分なのやから。

今日も、鼻毛抜きながら、行こか。

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