不在着信・姉・ポスター

知らない女が私の部屋に入ってきた。

「なぜ電話をくれないの?」

とその女は言った。

ガチャリというそのドアを開ける音で私は目が覚めた。

その女は玄関に立っていた。

なぜ電話をくれないの?

何のことだ。

どうやら女は、私のとなりで寝ている姉に言っているようだった。

姉はその女の声には気づかすに、まだ寝ていた。

私はその女の登場に非常に驚き、恐怖を感じていた。

心臓はバクバクしている。

その女の言っていることに多少混乱したが、そこは冷静にならねばなるまい、と私は強く思った。

姉のケータイの画面を見た。

いくつもの不在着信を確認する。メールもいくつか届いている。

私は
「なんで音ならないの?」
と姉に聞いた。

姉は、まだ寝ている。

姉は看護師だった。

その仕事ぶりはマジメで、医師や上司からは信頼されており、後輩には慕われている。もちろん無断で休んだり、遅刻したりなど、決してしない人間なのだ。

そんな姉が、なぜ電話やメールにも気づかずにまだ寝ているのか。

突然私の部屋に入ってきたこの女は、いったい何者なのだ。

そもそもなぜ、私の部屋に姉がいるのか、よくわからない。

姉は車で3時間ほどの距離のところに住んでいる。

そうだ、なぜ姉がここにいるのだ?

その女は急いでいるようだった。

どうやってはいってきたんだろう。

玄関に向かって私は女に聞いた。
「鍵、空いてましたか?」

「鍵、かかってなかったわよ」
とその女は言った。

おかしい。

私は玄関の鍵を開けたまま寝たことは今までないのだ。

昨日もちゃんと鍵をしめたのだ。そのことは、よく覚えている。

その女の後ろに、知らない男が立っている。

幸の薄そうな男だ。

次は男か、やれやれ、と私は思った。

その男は、手荷物を持っている。

その手荷物は、「お歳暮」だということが、私はその時なぜか、理解できた。

「これをもらってください」
と、幸の薄そうな男は言った。

「もし受け取ってもらえないなら。せめてこのポスターを部屋にはってください」

ポスターをはる?

いったいどんなポスターだろう、と今では少し興味があるが、その時の私は正直言って、前の女と姉のことで実に忙しい。

その男の相手をしているヒマはない。

「すみません、そんなポスターを張る場所はありません」
と、幸の薄い男に言った。

姉は、まだねている。

「っていう夢を見た」

という話を、お客さまに聞いた。

はっきり言っておこう。

世界一どうでもいいこと、それは他人が見た夢の話だ。

他人の夢ほど、どうでもいいことはないのだ☆

知らんがな☆

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