味のわからない人間

どうやらボクは味がわからない人間らしい。

コーヒーメーカーの紙のフィルターをし忘れてコーヒーを淹れて、うまいと言いながらそれを飲んでた。
「何かが違う、いつもの方が確実にうまい」
と、違う誰かが言った。

フィルターを忘れているのだから、おいしいコーヒーなわけがない。その日からボクは味のわからない人間と呼ばれるようになった。

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味がわかるってどういうこと?

うどんよりカレーが好きとか、松坂牛よりも秋のさんまのほうが好き、とかそういうこと?こういうことなら、けっこうわかるのだけれど。いや、違うな。

いくつかのうどんを比べた結果、このうどんはうまい。これが味がわかるってこういうこと?あのコーヒーよりもこのコーヒーの方がうまい。これが味がわかるってこと?

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コーヒーフィルターなしのコーヒーがわからないのは、確かにダメなのだろう。
でも、これの方がうまい、あれの方が好きっていうのは、基本的にはその人の好みになるのではないだろうか。

隠し味は〇〇だ、とか、そんなんは初めからわからない。わかる人は食べる側の料理の鉄人だ。

沖縄で買ったさんぴん茶

こういう感じの味が好き、とか、あの香りがいいとかは、めっちゃある。
もう、それでいいやん。もうそれくらい雑な感じでいいやん。どうせ味のわからない人間なのだから。

これって、芸術の分野でも同じようなことが言えるのでは。世界的に評価が高い絵を見て、どれくらいの人がその価値をわかるのだろう。ボクはじぇんじぇんわからないから、となりの人が書いてる落書きみたいなイラストのほうが、上手に見えてうらやましかったりするのだ。

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味も芸術もレベルが高すぎるとわからない。ただ、ボクは普通レベルの味すらわかってない。

味がわからないボクは、ひさしぶりのダシには感動するし、腹が減ってる時のペヤングは格別。旬の魚や野菜は産地で食べるのめっちゃ好き。食後のコーヒーはバツグンにおいしい。そして夏のアイスに勝てるものは、地球上にはないのである。

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